雪山登山の装備と言っても雪山登山のジャンルによりそれぞれ装備するものは違ってきます。もちろん共通なものもたくさんありますが初心者向けに解説していきます。
雪山登山のジャンルには「雪山ハイキング」から一般的な「雪山登山」「アイスクライミング」「アルパインクライミング」等色々です。今回は初心者向けですので「雪山ハイキング」と「雪山登山」のジャンルで解説していこうと思います。
厳密には「雪山ハイキング」と「雪山登山」の定義も難しいですが、個人的には次のように考えています。
「雪山ハイキング」
アップダウンが少なく場合によってはアイゼンは必要ではないが「チェーンアイゼン」や「スノーシュー」が必要で、行動時間が3~4時間程度の無雪期のハイキングエリア。
「雪山登山」
アップダウンがあり、冬期登山道の出現や「アイゼン」「ピッケル」が必須となるエリアで行動時間が6~7時間あり、無雪期の日帰り登山と同等なエリア。
すごく個人的な線引きなのでご了承ください。
※今回のウエアやギアのリンクは全て山爺が使用しているものになります。
目次
雪山登山装備(ウエア)
まずは雪山登山での共通項である「ウエア」からご説明です。
夏山同様に「雪山登山」でもレイヤリングが基本です。一番注意しなければいけない事は夏山以上に「汗」のコントロールが重要になります。汗をかいてしまうと「低体温症」というリスクがついてきます。
ですので「気温」「歩く場所」によって都度レイヤリングをチェンジし、汗をかいたとしても薄っすらで納め常にドライでいることが重要です!
インナー
最近の流行りでインナーをベースレイヤーの下に着込むアイテムです。汗抜けに特化した素材で出来ていて、瞬時にベースレイヤーへ汗を移動させてくれます。また雪山登山では保温も兼ねていることがあるので、3シーズン時のインナーより厚手にできています。
代表的なインナーは以下の通り。
・ミレー ドライナミック
・モンベル
・ファイントラック
ちなみに山爺は雪山登山時と厳冬期の低山登山においては「ミレー ドライナミック」を使用しています。はっきり言ってあったかいのでお勧めです!
が3シーズン時の使用は暑くて無理だと思います(笑)
ベースレイヤー
次にベースレイヤーになります。このベースレイヤーの目的は雪山登山においては「保温」と「速乾」に焦点を合わせてチョイスします。保温重視ですと「ウール」素材があり、速乾重視ですと化繊の厚手の素材を選ぶことになります。
代表的なベースレイヤー。
・パタゴニ
・ファイントラック
・モンベル
ちなみに山爺はウールのチクチクが嫌なので化繊で厚手の物を着ています。
ミドルレイヤー
次にミドルレイヤーです。このミドルレイヤーは難しいレイヤリングになると思います。人によっては厚手の「フリース」を着たり、ソフトシェル的なものを着たりすると思います。また場合によっては薄手のダウンを着る場合もあります(行動中は着ないと思いますが)。
正解がなかなか難しいですが、山爺の場合は以下のように使い分けています。
≪0℃~-5℃≫
・薄手のフリース素材
≪-5℃~-10℃≫
・ソフトシェル(ウインドウシェル)
気温によってはこのレイヤリングを間違えると、大量に汗をかいてしまいますし個々によって耐寒温度も違います。汗をかかないぎりぎりのラインで「インナー」「ベースレイヤー」「ミドルレイヤー」を調節してください。
厚手のベースレイヤーとしても使ってます
アウター
アウターはいわゆる「ハードシェル」と言われるものです。3シーズンよりも厚手のゴアテックス素材で作られていることがほとんどです。ですので3シーズンのアウターよりもお値段もそれなりにします。
ですが、防風対策と保温という観点からは出来れば揃えてほしいアイテムです。ちなみに雪山用のハードシェルは生地が厚いことに加え、表面がザラザラしています。これは万が一雪山で滑落した場合に雪に対して抵抗がかかり滑りにくくするという利点があるのです。
・ミレー
・アウトドアリサーチ
最近新しく買ったアウターです
ちなみに山爺は1年間これで着まわしてしまっています。デメリットはザック内でかさばったり、薄手のアウターに比べ当然重量が増えることです。
パンツ
次に雪山登山でパンツは何を履いたら良いのと思っている方も多いとは思います。間違っても3シーズン用の薄い生地のパンツは止めておいたほうが良いと思います。(オーバーパンツを重ねるのならOKです)
通常ですと雪山登山では天候と気温にもよりますが、3シーズンのパンツよりも厚手のものを選びます、また裏地が起毛しているものも最近はあるのでお好みでチョイスしてください。また最近は「ソフトシェル」素材でのパンツがあるので、機動性の関係でソフトシェルパンツが多くなってきています。
テルヌアのパンツ色違いですが
山爺は天候と気温次第ですが「ソフトシェルパンツ」+「モモヒキ」でほとんど雪山登山はこなしています。
オーバーパンツ
上記のパンツと被りますが、最近ではこの「オーバーパンツ」はあまり見かけなくなってきた気がします(ビブのついたスキー用のパンツ:ドムみたいなやつね)、また上述のソフトシェルパンツの台頭でやや影が薄くなってきています。
一昔前では雪山登山といったら「オーバーパンツ」でしたが、機動性の悪さ(足上げがキツイ)や嵩張ることもあり、雪山用(冬期)のパンツやソフトシェル素材のパンツが各ブランドから出ているので、そちらへシフトしているように思います。
素材の進歩が目覚ましいが故に、過去のアイテムになりつつあるオーバーパンツですが、山爺もオーバーパンツは持っています。正確にいうと新素材であるゴアテックス・シーニットのパンツになります。見た目はレインパンツのようですが、伸縮するので履いていても足上げ等にも無理はありません。
山爺が使用しているオーバーパンツ
このゴアテックスシーニットはハードシェル系としても使われている素材ですので、透湿・耐風・防水は雪山登山で十分耐えうる素材です。
ソックス
ソックスは後述しますが雪山用登山靴と密接に関係してきます。雪山用登山靴があるという前提であれば、少々厚手のソックスを履けば寒さは問題ありません。
では雪山用登山靴を持っていない、または雪山用登山靴があるが足が冷たくなるといった方には、「厚手のソックス」+「発熱性ソックス」等の重ね履きをお勧めします。
靴の性能と個人差があるので、これが正解とは断言できませんが、いくつかソックスを持参し気温と共にデータ取りをして、自分にあったソックスやソックスレイヤリングを見つけて下さい。
FITSの厚手を年間通して使用
グローブ
このグローブも雪山登山においては、非常に悩ましいアイテムで気温や天候によって左右されます。もちろん個人差(耐寒温度)によっても変わってきます。
基本はグローブもレイヤリングでの装着をします。
「薄手インナーグローブ」+「厚手のグローブ」が一般的かと思います。
極度に寒い場合は上記に加え「オーバーグローブ」を装着しま。
グローブのレイヤリングには正解が無く、個々で見つけるしかありません!
ちなみに山爺のレイヤリングを紹介
・ミズノ ブレスサーモ(インナー)
・マジックマウンテン 厚手ウール
・オーバーグローブ 好日山荘オリジナル
※ラッセルやテント泊時の為に「テムレス黒の自作改造VER」も持っていきます。
注意
グローブは濡れたらそこで終了です。必ず雪山登山時はスペア(予備セット)を持っていってください。万が一の場合「凍傷」のリスクがあるので必ず予備は持つことと、濡れないようにドライサックやジプロック等で保護することも大切です。
モモヒキ・タイツ等
さすがに気温が-5℃も下回ってくると行動中は寒さを感じませんが、行動停止中(休憩中)には、足も寒さを感じてくるかもしれません。
そんな場合には最初から履いておくことになりますが、厚手・薄手色々ですが「モモヒキ・タイツ」のいずれかを、パンツの下に1枚履いておきます。
厚手のタイツを履いていれば経験上-10℃までは全然耐えられるのですが、個人差によっても変わってくるのでベストな履き方(重ね履き)を模索して下さい。
ノースフェイスのタイツ
帽子
冬季においてはかなり気温が下がるので、停滞時や登山開始時は頭もかなり寒いです。特に「耳」は冷たくなるので耳まで隠せるビーニータイプの帽子がお勧めです。素材は「ウール」「ニット」が一般的ですが、ハイクアップ時は汗をかいてしまい、かなり蒸れたり無駄な汗をかく可能性があるので注意が必要です。
山爺は最近はもっぱら「Buff」を愛用しています。ウールやニット系の帽子よりも通気性は良いですし、薄手の素材なのですが保温に関してはハイクアップ中にかぶっていても、無駄な汗をかくことがありませんので非常にお勧めです。
Buffは最近もっぱら絶賛使用中
バラクラバ
バラクラバを使うシーンは雪山登山を始めた場合は、ある程度の標高のある山に登る場合は早々に必要になるアイテムです。「強風」や「降雪」の場合はバラクラバなしでは寒くて行動できません、というか顔面凍傷になってしまうので必ず顔の保護をしましょう。
ただし呼吸の仕方で口元がべちゃべちゃになって不快だったり、呼気が鼻の横から抜けてサングラス・ゴーグル等が曇ってしまったりと、何かと使い勝手に妥協を許さなくなってしまうアイテムなので、山爺も今のバラクラバに落ち着くまで3回も買いなおしています(笑)。
モンベルHPでどうぞ
ネオプレン フェイスバラクラバ
サングラス
紫外線対策は夏山登山でも当たり前ですが、雪山登山ではそれ以上に重要です。ご存知かもしれませんが「雪目」という症状になってしまう恐れがあるので、必ずその対策として必須のアイテムになります。雪面の状況が良く見えるように、できれば偏光レンズのものを選ぶほうが良いと思います。
オークリー、使用はひとつ前のモデルですが
ゴーグル
風がなければサングラスで良いのですが、風や雪が強くなるとサングラスでは風が目に巻き込んできますし雪も目に入ってきますので「ゴーグル」でないと対応ができません。雪山登山時には使わなかったとしても必ず携行していきましょう。
SMITHのゴーグル使ってます(使用は1つ前の世代です)
雪山登山装備(ギア)
ここからはギア類になります。雪山登山特有のギアがあります、夏山登山に比べるとお値段の張るものが多いですが、必ず必要になってしまうので少しずつでもいいので揃えていきましょう。特に「アイゼン(クランポン)」と「ピッケル」は必須です。
雪山用登山靴
出来れば「雪山用登山靴」は揃えてほしいのですが3シーズンの登山靴に比べてかなり「高い」です、がしかし「保温力」「剛性(アイゼン装着)」が3シーズン登山靴とは全く性能が違いますし、ある意味では必須ではあります。とは言うものの雪山登山時に3シーズン登山靴で登られている方もいます、「保温力」「剛性(アイゼン装着)」のデメリットを無視できるのであれば可能ではあります。
LOWAの冬靴です。
ポール(ストック)
雪山登山時は、急峻な上り下り以外はバランス取りとしてポールを使います、3シーズン時と違う点は「バスケット」の大きさになります。ポール(ストック)の先に付いている「丸いヤツ」です。必ず雪山登山時にはお手持ちのポール(ストック)のバスケットを雪山用の大きなものに換装しておいてください。まれにバスケット交換ができないポールもありますが、大抵は雪山用のバスケットがポールと同じメーカー内で別売されています。
この雪山用のバスケットを装着しないと雪面にポールを突いたときに予想外に「ズボッ」と埋まります!
ブラックダイヤモンド(既に杯盤になっているのでこれが現行モデルだと思います)
ピッケル
雪山登山と言えばこの「ピッケル」も代表的なギアです。使わない場合はただの重りになりますが、雪山登山時は必ず携行しましょう。急峻な「上り」「下り」「トラバース」「アイスバーン」と各ポイントで適時使用します。雪山登山時においてはピッケルが自分の命を守ってくれる最大のギアですので、ピッケルワークも併せて習得していかなければなりません。
グリベルのピッケル使ってます(スタンダードです)
アイゼン(クランポン)
ピッケルと同じに重要なギア「アイゼン(クランポン)」です。雪の状態によっては後述するワカンやスノーシューも必要な場合がありますが、まず雪山登山の歩行においては必須となるギアが「アイゼン(クランポン)」です。
よく「10本爪」と「12本爪」のどちらを買うべきかという議論になりますが、個人的には「12本爪」を買ってください。最初は標高の低くて急峻な場所がない雪山登山であったとしても、いずれそういった場所に行きたくなったり標高が低くてもそういった状況に出くわす可能性もあります。「12本爪」であれば一般雪山登山では使いまわしができるので、最初から「12本爪」の購入をお勧めします。
定番のグリベルの12本爪です(一般登山ならG12じゃなくても多分大丈夫です)
チェーンアイゼン
チェーンアイゼンは主に降雪の少ない場所や初冬時に使うことが多いです。無いと困るというとそう言う訳ではないのですが、アイゼンを履くまでもなく、かといってツボ足だと滑るといったシュチュエーションで装着します。アイゼンよりは軽いので、軽快に歩行することができますがアイゼン程のグリップ力はありません。
エバニューのチェーンアイゼンです
ワカン
ワカンは昔で言うところの「かんじき」になります。「新雪」「深雪」時に装着して歩行します、こういった雪の状態ではアイゼンでは逆に歩きずらく「ワカン」の出番となります。登山者の多いエリアで冬道のトレースがしっかりと固められている場合は必要ないかもしれませんが、降雪直後ではそういった登山道でもラッセルをしなくてはいけない状態になったりもします、そんな時も「ワカン」の出番となります。
必ずしも必須ではないのですが、明らかに雪山の状態が分っている場合以外は携行します。
マジックマウンテンの前が反っているタイプです。
スノーシュー
山爺は「スノーシュー」は使用したことがありませんが、平原のような場所や新雪であまり沈み込みがないような場合は、ワカンよりも能力が上のアイテムです。雪山登山でも場所によっては使用している方もいます。
持ってはいませんが欲しい♪
雪山登山装備(小物)
ここからは雪山登山にあると便利なアイテムだったり、雪山登山ならではのアイテムのご紹介です。実際に山爺も全て持っていますし活用しています。個々によって必要・不必要があるかもしれませんが参考にされてください。
保温マグ
雪山においてはザックの外に取り付けてある、ナルゲンボトルやPETボトルは普通に凍ります。雪山登山時の水分補給は保温マグを使用します。なので保温マグにお湯を入れておきザック内にしまっておきます。外気に触れると温度が下がりますし、万が一保温マグがザックから落ちると止めどなく滑落してしまうことを防ぎます。
有名どころはサーモス山専ボトルですが、山爺はサーモスの普通の保温マグ使っています。
リーシュ
「リーシュ」とはピッケルを身体や手から離れないようにするためのコードになります。実はピッケルのリーシュは必要・不必要の賛否があります、個人的にはリーシュはあったほうが良いと思います。ピッケルに慣れていなくて、落としてしまったらピッケル無しでは下山も出来なくなってしまうことだってあるからです。
各ピッケルのメーカーから専用のリーシュが各種販売されていますが、スリングとカラビナだけでも同様のリーシュを作成することも可能です。山爺はスリングとカラビナでリーシュ作成しています。嫁はリンクの商品です。
ピッケルカバー
ピッケルには尖った部分があるので、特に公共交通機関利用やロープウエイ・人の多いところでは気を付けなくてはいけません。ですので登山を開始するまでは尖った部分を保護しておきます。主に2か所は最低保護しましょう、「ピック部分」「石突部分」です。各メーカーから純正のものも出ていますし、ゴムホースをピック部分に付けたり色々とできます。山爺はブラックダイヤモンドのピッケルガードをつけています。
ブラックダイヤモンドのカバーが使いやすい
アイゼンケース
アイゼンケースも必要です。ピッケル同様というかもっと鋭利な爪になるので、携行するときもケースが必須になります。アイゼンケースも各メーカーから色々出ているのでお好みでチョイスしてください。ただしアイゼンのしまい方(アイゼンの全長を縮めないとしまえないケースもある)によっては入いらないケースもあるので注意して選んでください。
マウンテンダックスのアイゼンケースです(長いサイズのまましまえます)
携帯トイレ
夏山でも携行の勧めはしますが、雪山登山では必須になります。特定の山小屋以外は冬季休業ですので、トイレは使えないことがほとんどです。昨今の環境に対するローインパクトの意味もあるので「携帯トイレ」で用を足して持ち帰りが推奨です。
携帯トイレ、100均でも売ってるのでお好きなものを
ドライサック
ドライサックとは基本完全防水に近い物入れです。通常防水加工されたナイロンの袋になります。代用品としてはジップロックだったりしますが、ビニールなので強度的にはドライサックに劣ってしまうので、山爺はドライサックとジプロックの両方使いをしています。
最近使っているのはキャラバンです
まとめ
いかがでしたか?雪山登山がどれだけの装備が必要か分かったかと思います!「こんなにギア類含めて必要なら雪山登山はしないです」ってならないことを祈ります(笑)。
とは言っても全てのウエアやギアを最初から揃えるのは経済的にも負担が大きいので、2シーズンがかりで揃えていってもいいのです!山爺も2年がかりで全て揃えましたので♪
お財布がきつくなって雪山や普通の山にも行けなくなったら元も子もないですからね!
そうまでして雪山登山したい?とお思いの方もいるのも事実ですが、3シーズンでは味わえない「景色」や雪山ならではの「登山の面白さ」があるので、最初はスノーシューハイクでも構わないと思いますので、ぜひ雪山登山の体験はしてほしいと思います。
言い忘れましたが「雪山登山」は、3シーズンの登山に比べて圧倒的に危険度は増します!!楽しいことばかりでは無いことは肝に銘じてください!!
以前にも書きましたが雪山登山は「体力」「技術」「知識」は必須になります。
ではでは。