山行記

木曽駒ヶ岳の雪山登山(2019年2月10日状況・宝剣岳滑落・八丁坂滑落事故多発)

今回の山行記は2019年2月10日(日)の木曽駒ヶ岳雪山登山になります。多分、登山をされている方でしたら既にご存知かとは思いますが、この日はNEWSでもかなり流れていたのですが、滑落・死亡事故が多発した日です。普段はおちゃらけてブログを書いていますが、注意喚起も含めて真面目に書きます。今後の木曽駒ヶ岳雪山登山を計画されている方で初心者の方は必読してください。山爺も雪山に関しては初心者でステップアップ中ですが、身の引き締まる体験をしましたので。

正直どこまで書こうか悩みますが、今後の雪山登山をする上での覚悟と技量を確かめてから登山に行ってください。

また、お亡くなりになった方には、ご冥福をお祈りいたします。

目次

木曽駒ヶ岳データ

場所:長野県上松町・木曽町・宮田村の境界 木曽山脈(中央アルプス)の最高峰
標高:2,956m
標高差:300m(千畳敷駅より)
行動距離:往復3.6Km
行動時間:3時間~4時間(休憩除く・八丁坂中経由)
アクセス:木曽駒ヶ岳への玄関口はマイカーなら駒ヶ根ICより10分程。公共交通機関の場合は新宿大阪名古屋から高速バスで菅の台バスセンター直行便有
駐車場:長いので記事下部で詳細確認してください

余談:千畳敷カールとは2万年前、氷河期の氷で削り取られたお椀型の地形
参考URL https://www.chuo-alps.com/tourism/senjyojiki/
宝剣岳:木曽駒ヶ岳の南に位置し東麓の千畳敷カールからは大きな岩峰として望め中央アルプスの代表的な風景に挙げられている。

冬季木曽駒ヶ岳登山ルート

通常、木曽駒ヶ岳への冬季登頂は一般登山者であれば、千畳敷駅までロープウェイを使い

・八丁坂~乗越浄土~中岳~木曽駒ヶ岳山頂

を目指すのが大半だと思います。また一般的には初心者の雪山登山の登竜門的な情報が多くあると思います。

ですが、雪山ゆえの雪質によるグレード・難易度上昇には、本当に気をつけてください。

山行記録

木曽駒ヶ岳ロープウエイ山頂駅を降り、雪原にでるまでに屋内で装備を整えますが、ここから既に今回は不穏な空気をやや感じていました。

冬季には遭対協の方が装備チェックと登山届の確認をしているのは知っていましたが、前日の2月9日(土)に宝剣岳での滑落事故による遭難者の救助が翌日の10日(日)朝の時点で出来ていないことを知りました。(10日(日)に救助・死亡が確認されたそうです)

この屋内で装備を整えていると、考えられない事態に遭遇します。それはアイゼンの付け方を分かっていない方がいて、登山者の戸惑っている感じに遭対協の方がレクチャーをしつつ装着していた事です。

はっきり言って、この時点で帰ったほうがいいです。厳しい言い方かもしれませんが、雪山に登る資格は無いと考えます。自分の身を守ってくれるギアの使い方・装着の仕方が判らないって事は、雪山についての登山方法・アイゼン歩行もどうなんですか?と考えてしまいました。
(ご批判は覚悟の上です)

同時に、八丁坂上部は9日(土)に降った雨により、クラスト状態になっているとのアナウンスがあり、正直この時点で少々不安がでました。事前情報により、乗越浄土手前はいつもアイスバーン状態だとは知っていたので、気を引き締めてスタートしました。

千畳敷駅~八丁坂鞍部

千畳敷ホテルを出てから八丁坂鞍部までは、特段気にする危険個所はありませんでした。雪の状態はふかふかで、ひざ下位の積雪量です。既にトレースがあるので、ワカンを付けるほどではありません。

八丁坂鞍部~八丁坂~乗越浄土

ここからが、今回の記事の核心でもあります。先に結論から言うと、アイゼン歩行(キックステップ等)・ピッケルワークが出来ないと普通に滑落します。

実際、山爺はロープウェイの1便でしたので、登山開始時は第1グループの一番最後か、第2グループの先頭的なポジションで八丁坂に突入しました。

オットセイ岩を過ぎるまでは、割とふかふかの雪面状態ですので、先行者の作ったステップを利用すれば問題なく登れると思います。が、オットセイ岩を過ぎた辺りから、雪質が変わり始め、やや硬めの雪質になり深くキックステップを入れると、下層は柔らかい雪質となっていました。ここまでは、初心者の方やアイゼンに慣れていない方でも、どうにか登れる状態ではあったと思います。

八丁坂を2/3を過ぎた時点から、がらりと雪面の状態が変わります。完全なクラスト状態です。氷の厚さは3cm~5cm程ですが、その氷の下はしまった雪があります、柔らかい雪もありと、アンジュレーションが変わります。恐らく八丁坂では、最大斜度のあるところです。

上り方としては、ピッケルのピックを雪面へ差し込み、ステップらしきものがあれが、そこへキックステップで蹴り込み四足で登ります。この段階で既に初心者らしき人(少し高齢の方)は、かなり不安を訴えながら登っています。そんな状態があちらこちらで散見していました。

多分、本人が無理と判断した時点で下山を考えなければいけないと思うのですが・・・

この辺りから、徐々に渋滞気味になってきます。八丁坂半分位までは割と好き勝手な距離を取りながら登る事が出来たのですが、残り1/3からはほぼ等間隔で先行者との間隔が1m程の渋滞が乗越浄土まで連なっています。

そして、乗越浄土まで最後の15mほどですが、完全なアイスバーン状態です。ここからは、アイゼンの前爪だけでのキックステップにピッケルも全開で氷面に振り下ろして支点確保状態で登ります。

先行者との間隔も狭いのですが、自分のペースで登る事がなかなかできません。周りもみんな必死で、落雪や氷の落にも気に留める感じもなく、滑落しない状態で登ることだけ考えていた空気感がありました。(出来る限り先行者とのスペースは取ったほうがいいです

ただ、この状態はオットセイ岩側から宝剣山荘側への直登ルートになります。八丁坂のラスト15m位には、もう一つのルートとして宝剣岳の看板側へ上る夏道もあります、ロープでジグザグにトラバースできます。朝いちばんではその夏道も恐らくアイスバーンにはなっていると思いますが、宝剣山荘への直登ルートよりも幾分簡単に登れると思います。

※なかなかハードなルートですが、アイゼンワークとピッケル操作ができ、落ち着いていけば登れます。ですが、後続者が近づいてくる状態や、滑落したらどうしようとか、不安や焦りを感じるのも事実です。ですが、このルートを選択した以上はきっちりとアイゼンを効かせて登る必要があります。

※実は最初の滑落は山爺の後方、時間にして15分~20分後ろにいた男女が最初に滑落します。宝剣山荘で休憩をしている時に、後から来たご婦人から、その事態を聞きます。話によると、そのご婦人の前にいた女性が乗越浄土到着目前部分で、足を滑らせそのご婦人の顔面にアイゼンの爪をかすめ、そのまま150m下まで滑落したそうです。更に、お連れかどうかは分からなかったそうですが、同時に男性も滑落したそうです。(無事ではあったそうです)

※吹き下ろしの強風が瞬間的に襲ってくるので、バラスンを崩す場合あり必ず耐風姿勢を取ってください。

※氷のかけらがかなり落ちてくるので、ヘルメットは必須だと思った方が良いです。自分が気を付けていても他の登山者による氷の落も沢山あります。

乗越浄土~宝剣山荘(天狗荘)~中岳

このルートは無雪期であれば、単なる広い登山道を進むだけなのですが、前日の雨もありほとんどがアイスバーンになっています。ルートの真ん中を歩いて下さい。広い登山道とは言え、両サイドはカリカリのアイスバーンで切れ落ちているところになります。

ところどころに岩がありますが、岩にも一度溶けた雪が透明になっていて、そこそこの厚みで全体を氷が覆っていますので、間違っても岩の上には乗らないことです。

中岳へは直登しますが、こちらも殆どカリカリのアイスバーンだと思ってください。山頂の大きな岩を木曽駒ヶ岳方面へ反時計回りでトラバース気味に右サイドから駒ヶ岳頂上山荘へ向けて鞍部に下ります。もちろん下りもカリカリです。注意をしていれば普通に下りれます。

中岳~木曽駒ヶ岳山頂

鞍部から木曽駒ヶ岳山頂は多少岩交じりの多少ジグザグに直登します。雪の付き方の薄かったところは殆どアイスバーンになっていますので、やはりスリップに注意です。

風はめちゃめちゃありますので、休憩ポイントは山頂の祠の手前にある石垣のところのみです。

下山

上りはステップがあれば何とか気合と根性で登れてしまいますが、下りはそうもいきません。確実なアイゼン歩行が必要になります。

・木曽駒ヶ岳山頂からの下山
滑落事故発生:山爺とは5m程離れたところにいた高齢の方、運よく岩場の始まる前の段差にピッケルが偶然ひっかかり岩場帯に突入する事無く、引率者によって引き上げられた。幸いにも10mも滑らないでストップしたので、その後はゆっくり歩き始めました。

正直、この現場を目の当たりにした時に滑落した方は恐らく既に足元がおぼつかなかったと同時に、アイゼン歩行が殆どできていなかったのかもしれません。決して難しい下山の場所ではなかったのですが・・・

・中岳からの下山
上り同様ですが、しっかりアイゼンを効かせれば問題がありませんが、山頂の大岩を今度は時計回りにトラバースしますので、心理的に谷側のアイスバーンが気になるところです。

・八丁坂の下山
滑落事故発生:乗越浄土から下山直ぐの場所からオットセイ岩まで滑落。骨折により行動不能、要救助要請で遭対協が現場到着で一時、八丁坂が通行止めになりました。

山爺はこの時、乗越浄土に到着し八丁坂を下りようとしていた時に停滞していた下山待ちの方から情報を得ました。滑落が起こったのはほんの数分前で、宝剣山荘前にいた遭対協の方が下りていき救助活動にあたっている最中でした。恐らく200mは滑落していました。

通行止めが解除になり、いよいよ下山ですが、その場の空気が滑落事故により一変しており、上り時のあの空気感が再燃します。午後ですので雪は少し緩み、氷も砕かれていますので、場合によっては立ったままで下山することも可能のように見えましたが、みな安全を考え後ろ向きに四足のキックステップでクライムダウンを始めました。

ピッケルのピックを雪面に刺し、アイゼンの前爪を蹴り込みながらの下山方法です。この時点では、八丁坂中央部を皆さんが下りていましたので、朝の上り程雪面状態は悪くなく比較的安心して下りることが出来ていました。ただし、皆さんと違うトレースを取ると朝と似たような状況の場所も多々あり、オットセイ岩くらいまでは、皆さん後ろ向きでのクライムダウンをしていました。

そんな折、山爺の後方にいた嫁の5m並行位置にいた女性が滑落しました。核心部は過ぎていましたが、固い雪面のトレースの少ない場所(上りで言うと八丁坂右サイドの岩場側)です。幸いにも数mで止まりました。ちょうど山爺と並行する場所まで滑落し止まったので、声をかけさせていただき、山爺が通ってるルートへ来た方が良いと言ったのですが、そのルートへの並行移動も出来ずかなりの苦戦をし時間を掛けながら移動し事なきを得ました。

八丁坂の鞍部までくれば一安心ですが、一番気の緩む時なので慎重に歩くことには変わりはありません。

最後に、千畳敷ホテルまでの上りがありますが、結構これがしんどい!下山の緊張した気持ちが解かれ、最後の上りでメンタルと身体にキマス!

 

後は、ロープウエイに乗りバスで菅の台バスセンターに到着で下山完了です。

総評(まとめ・感想)

実は、上記に乗せていない滑落事故があちこちで起きていました。帰りのバスの中でも、山爺が目撃したのとは別の滑落事故がおきていて、その話をしていました。多分要救助のなかった滑落だけで4~5件はあった模様です

ヤマレコでもしりましたが、中岳の上りで150m滑落したとの情報もありました。中岳の上りは確かにつるつるでフラットなので、滑ったら最後です、鞍部にたどり着くまでは止まらないと思います。中岳の山頂の大岩をぐるりとトラバースするトレースも嫌な斜度があり、もちろんテカテカに光ったアイスバーンでしたから。

まず言えることは、勇気ある撤退を考えてほしいです。木曽駒ヶ岳雪山登山で最初にでる八丁坂が最大の難所になります。オットセイ岩手前で判断する事は、恥ずかしいことでも何でもないです。自分の命や怪我、万が一他人を巻き込んでしまうリスクを考えてから上る事を進めます。(実際に滑落現場に遭遇し撤退をしたグループもいました)

SNS系でみたのですが登山歴が浅く、ましてや雪山は1回経験したことがあるような方が、ノリやグループでのイベント的な考えで上ってしまい、結果事故を起こすというのは色々な意味で迷惑がかかります。結果的に上れてしまったと言う事は、あくまでも結果論であって技術を伴い安全に上れたと言う事ではないですよね?確かに登山には(無雪期・積雪期)それ相応のリスクがあり、自己責任のうえで自分で身を守り安全に登山をすることが基本です。

ギアの使い方・使用方法・歩行テクニック・雪山装備等、万全な体制で挑むのは当たり前で、基本中の基本だと思います。それでも事故は起きるときは起きてしまいます。屈強な登山家や著名な冒険家ですら事故にあってしまう状況があるんだと思ってほしいです。

今回の雪山登山は山爺にとって、本当に勉強になりました。

・雪山たるものが何なのか?
・安全登山をする上での技術は、どれくらい持っているのか?
・危険察知はできてるのか?
・自分の技量で通過できるのか?
・怖くないか(山に飲まれていないか)?

多分、過去数年の間での山行で、ここまで死亡事故や滑落事故に遭遇した日はありません。行きのロープウエイの中で皆楽しくワクワクし談笑していたのにと記憶がフラッシュバックしました。

誰しも滑落や怪我をするために登山をしに来たわけではないのは分かっていますが、生意気なようですが身分相応の山行はあるはずです。山爺も風・天候・雪の状態によっては当然撤退の選択肢もありました。決して上から目線でものを言うつもりはありませんが、ご自身の技量で本当に上れるのか?今回の場合は八丁坂を含めて全域になりましたが、初心者の雪山登山登竜門とはいえ完全に中級レベルのアイゼンワークは必要でしたし、ピッケルワークも必要だった思います。

これから木曽駒ヶ岳に限らず、雪山山行を計画されている方で特に初心者や雪山登山の経験の浅い方は、今一度よく計画を練りご自身の技量を考えつつご検討ください。

菅の台バスセンター駐車場

中央道駒ヶ根ICを降りたら突き当り右折、10分で菅の台バスセンター駐車場到着です。
駒ヶ根ICを降りてから菅の台バスセンターまでコンビニはありませんので、翌日の朝食やお昼ご飯は事前に準備したほうがいいです。
駐車料金:一回600円 URL https://www.chuo-alps.com/fare/

冬季:基本朝の5時くらいまではガラガラです。大体6時~7時を目安に駐車場に到着が多いかもしれません。決して満車で他の駐車場を探すような事はないので大丈夫です。

夏季:菅の台バスセンターの駐車場がいっぱいになると別の駐車場に誘導されます、利便性ではこの菅の台バスセンター駐車場が一番ですので、どうしても皆さん早めの到着をして、前日車中泊が多いです。因みに我が家のパターンですと金曜の夜21時頃出発して菅の台バスセンターに着くのが23時30分~24時の間くらいです。この時点で、空いてる時で駐車場の半分弱くらい埋まっています、混んでいる時は2/3は埋まっているいる感じです。朝の7時だとやばいかも!菅の台バスセンター駐車場以外の駐車場になると嫌でもバス乗り場から遠くなっていきます。

バス

冬季:始発が8時になります。混んでいる場合は臨時便がでます。バス停のベンチにザックを置いて順番確保します。(5時~6時くらいにはザック置きが始まります)
チケット売り場の開始時刻は7時40分位からです。寒いので7時30分くらいにならないと並びません。補足として、ケースバイケースですが、菅の台駐車場のチケット売り場は閉鎖になり、バスの降車時に料金を払い、ロープウエイのチケット売り場で料金を払うといったパターンの時もあるそうです。

夏季:長蛇の列へ並びます。季節によってバス・ロープウエイチケット購入の窓口の時間は違いますが、概ね開始の1時間前からは並びます。無事チケットが買えたら、今度はバス待ちの違う長蛇の列に並び直します。
バス:大人 1640円 子供 820円 (往復)
バス・ロープウェイ参考 URL https://www.chuo-alps.com/fare/

駒ヶ岳ロープウエイ

冬季:ロープウエイは1便のバスが到着後始発が9時になります。バスの臨時便が出た場合はロープウエイの臨時便も出ます。ただし、基本的に混雑時以外は1時間に1本の運行になるので、お帰りの際の時刻には注意しましょう。

※冬季ロープウエイ料金割引キャンペーン中です(25%引き)
詳しくは下記URLより参照してください。
https://www.chuo-alps.com/outdoor/

夏季:バスの終着のロープウエイに到着です。ここでも長蛇の列に並びますが、バス同様混雑時は臨時便を出すので、通常間隔よりも短く増発するので順番まで待ちましょう。乗り込めば日本で一番高所にある千畳敷駅に到着です。
ロープウェイ:大人 2260円 子供 1130円 (往復)
バス・ロープウェイ参考 URL https://www.chuo-alps.com/fare/

 

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