雪山登山シーズン真っ盛りですが、各所雪が少ないとSNS上でも嘆きが見られますね。山爺も年末の「谷川岳」と年明けの「天狗岳」へ行きましたが、やっぱり例年に比べ雪は少なかったですね。
1月中の降雪に期待しつつ、次の雪山登山を計画中です♪
さて今回は雪山登山での必須アイテム「アイゼン(クランポン)」にフォーカスしてみたいと思います。
我が家には「グリベル:エアーテック・オーマチックSP(12本爪)」と「エバニュー:10本爪アイゼン」があります。
グリベル:エアーテック・オーマチックSPは冬靴に合わせます、エバニュー:10本爪アイゼンは嫁のなのですが残雪期に嫁の登山靴(ハンワグ:アラスカ)に合わせるように保管してあります。
この「アイゼン(クランポン)」ですが、値段もさることながら「装着方法」「種類」「メーカー」等、初心者には疑問点が多いアイテムだと思います。
そこで今回の記事では上記疑問点やアイゼンのイロハを書いてみたいと思います。
目次
アイゼンは何で必要か?
そもそもの話ですが雪山登山において何で「アイゼン(クランポン)」は必要なんでしょうか?
さすがにこれは愚問ですね!雪のある斜面で滑って滑落しないようにするためですね(^^)
ちなみにですが、アイゼンは登山靴によって装着する種類が変わってきます、後述しますが登山靴のジャンルの理解が必要です。
・ライトアルパイン(後コバ)
・冬靴(前後コバ)
・トレッキング(コバ無)
これから雪山登山を始めるにあたっては、自分の登山靴がどんなジャンルのタイプの靴なのか判断し、適切な「アイゼン(クランポン)」を選択することが最初に始めなければいけない事です。
ご自分の登山靴のジャンルが分かったところで、次に行きましょう♪
アイゼンの爪は何本が正解?
上記ではアイゼンの種類を選択するためにお持ちの登山靴のジャンルを理解しましたが、次に悩むことが「12本爪」「10本爪」のどちらを選べばいいの?という疑問です。
結論から言うと「12本爪」を選択してください。
理由は個人的な観点ではありますが「10本爪」と比べると、いずれ以下のような事に遭遇します。
・雪面に対するグリップ(12本>10本)
・アイスバーンへのグリップ(12本>10本)
・前爪の必要性(12本≠10本)
・汎用性(12本>10本)
・カッコよさ(12本>10本)←個人的に
カッコよさは冗談として、以前「雲竜渓谷」に氷瀑を見に行った時の事なのですが、氷瀑の袂に行くには高巻きをして最終的に氷瀑の袂へ急峻なアイスバーンを下るのですが、山爺の前にいた登山者が「10本爪」の方でした。どうなったかというと10本爪を履いていたにも関わらず下りることができず、氷瀑を目の前に引き返すことになりました。(アイゼンの歩行技術の無さもあると思いますが…)
もう一つ例を挙げますとうちの嫁の話です。「北横岳」の雪山登山をした際の事ですが1年目は「トレッキングブーツ+10本爪」で山行し、2年目は「冬靴+12本爪」で山行しました。この2年目の雪山山行時にハッキリと分かったことがあったそうです。それは、北横岳山頂間際の最後の急登場所です、この上りで「10本爪」と「12本爪」のグリップ力の違いだったそうです。
それ以来うちの嫁は「12本爪」しか履いてません(笑)。
ここまで書くとおのずと答えは見えてきましたね、雪山登山で「12本爪」は決してオーバースペックではありません。逆に安心を得られる場合が多いです!
アイゼンはどのメーカーを選べばいいの?
「登山靴のジャンル」「12本爪」まで決定しました。では次にどのメーカーを選べばよいのでしょうか?アイゼンでのメジャーなブランドと言えば次の通りです。
・グリベル
・ブラックダイヤモンド
・ペツル
・モンベル(旧カジタックス)
正直、山爺はグリベルしか使ったことが無いので何とも言えませんが、上記の4メーカーからならどこでも安心して購入していいと思います。
がしかし、後々問題になってくるのが「厳冬期」と「残雪期」で登山靴を変えてアイゼンを履かれる場合は。ちょっとその事も踏まえたうえでアイゼンの決定をしなければなりません。
どういう事かというと、アイゼンには前後のコバ有の冬靴に対応する「ワンタッチアイゼン」と後コバだけのライトアルパインに対応する「セミワンタッチアイゼン」、前後コバ無しの「前後カップ式アイゼン」に別れます。
・ワンタッチアイゼン
前部分のベイルを交換し、前コバ無しの登山靴にも対応できる(メーカーによる)
前後コバのある冬靴に最も合っているアイゼン
・セミワンタッチアイゼン
冬靴にも対応できるがフィット感はワンタッチに劣る
前部分のベイル交換ができるものはワンタッチアイゼンになる(メーカーによる)
・前後カップ式アイゼン
前後コバ無しの登山靴のみに対応
こういった理由から、大多数の人が(山爺目線)「グリベル」か「ペツル」を選んでいるような気がします。
ちなみに山爺の購入は「エアーテック・オーマチックSP」でワンタッチアイゼンですが、別売りの「ベイル・レギュラー」を前コバ無しの登山靴で残雪期に対応させています。
ベイルの付け替え(交換)ができるタイプのアイゼンであればライトアルパインの登山靴にも装着することができるのでお勧めではあります。ご自身の今後の雪山登山と残雪時期にも使いたいとか様々だと思いますので、そこをよく検討して購入してください。
※冬靴(前後コバ有)でしたら、ワンタッチアイゼンで前ベイルの交換ができるアイゼンがお勧めです♪
ここからも重要なのですが、実はこの「アイゼン(クランポン)」は登山靴との相性があり、実際に登山靴とアイゼンを装着してみないとアイゼンのプレートから浮いてしまったり(特につま先)するので、必ず店頭で装着テストをしてからの購入を勧めます!(メーカーだけで決定しないように)
アイゼンの装着方法は?
これで購入のアイゼンが決まりましたね(^^)。次は登山靴への装着です、山爺はグリベルのアイゼンしか持っていませんので、グリベルのアイゼンを元にご説明していきます。
まずはお持ちの「登山靴とアイゼン」と「板」をご準備ください。板の無い方は穴が空いても良いものの上でアイゼンのセッティングと装着練習です。
※男性と女性によりジョイントプレートの装着が違います(足のサイズの小さい方)
アイゼンの組み立て
購入してからまずアイゼンの組み立てを行います。パーツは大きく3つに分かれています。
・つま先部分
・メタルプレート(黒)
・かかと部分
まずつま先部分とかかと部分を黒いプレートを通してアイゼンの形にします。ひとまずは組み立てが終わればOKです。
登山靴とのセッティング
次はご自身の登山靴とのセッティングを決めます。一度セッティングしてしまえば調整以外には動かすことは無いと思うので、最初だけがんばりましょう♪
①写真のように前コバにベイルを掛け、登山靴のかかとがアイゼンより少し大きい位の位置でプレートの長さを決定します。
②プレートの動かし方はグリベルの場合は、かかと側にある「スプリングヒールプレート」を指で浮かせると、黒いプレートがずれますので、①で決めた位置に合わせて黒プレートの穴の位置にセットします。
③黒プレートが穴にはまったらそれで終了です。重要なのはアイゼンの全長より登山靴のほうが少し長い事です。
④実際に登山靴の後ろコバに後ベイルを掛けて「バコッ」っていう感じにはまるようにセッティング出来ていたらOKです。ゆるかったり・ぐらつくようであれば「メタルプレート」の長さか後ベイルのネジで調整してみましょう。
これでアイゼンのセッティングはOKですが、女性や足の小さい人は「メタルプレート」だけでは長さの調整が出来ない場合があるので、その場合はメタルプレートを左右反対にして裏返すと足の小さい人でも対応できる長さに調整できます。
アイゼンの装着(ベルト通し)
登山靴にアイゼンは着きましたが、ベルトを通さないといけません!ベルトの通し方は内側から外側へが基本で折り返し行きます。
それからベルトはブラブラしないように通したベルトへ2重巻きにするとかベルトの末端をコンパクトに仕舞いましょう。(ブラブラだと引っ掛けたりして思わぬ転倒を引き起こします)
注意
そもそもアイゼンのベルトを通す2重のリングが足の内側になっている方がいますので、必ず2重のリングは「足の外側」に位置するようにアイゼンを地面に置いてください。
アイゼンの外し方
アイゼンの外し方は装着の反対です、二重のリングに付いてる黒い皮バンドを後側(踵方方向)へ引っ張るとアイゼンのストラップは緩みますので、あとは普通に外すだけです。
アイゼンのしまい方
アイゼンの仕舞い方は、そのままケースに仕舞ってOKですが、雪をよく払っておかないと雪が解けて水分によって濡れますので、特にザックに仕舞う方は注意してください。
アイゼンケースで仕舞う場合でもザックの中に入れたら同じですので注意してください。
山爺はアイゼンは不必要になったらザックに外付けしておきますが、マイカー登山なので車に着いたら乾かす意味もあってそのままむき出しにしています。
アイゼンのイロハ
さあアイゼンの装着はできるようになりました!次に必要なのはアイゼンでの歩行をすると様々な状況やあるあるに遭遇します。前もって知識として頭に入れておくと慌てなくてすみますので、参考にしてください。
アイゼン歩行
アイゼンを装着すると今までのようには歩けません。上り・下りでのアイゼンの使い方や歩行技術が必要になってきます。少しずつでいいので習得・練習をしていきましょう。
・フラットフィッティング
・フロントポインティング
・スリーオクロック
様々な斜面で様々な技術を駆使して走破します。
例えば雪山登山では急斜面を直登することも多いのですが、普通に登っていくとどうしても足首やふくらはぎが疲れてしまいます。そんな時には身体を半身に構えてスリーオクロックでの歩行をすると疲れずに安全に上ることができます。
またフラットな斜面では、足の間隔をやや空けてガニ股気味で歩かないと…
・アイゼンをゲイター等に引っ掛ける
・アイゼン同士がひっかりコケる
・慣れないと前爪を雪面にひっかける
経験しないとわからい事ばかりですが上記の3つはアイゼン歩行初期のころは必ず経験すると思います。
アイゼンはどのタイミングで装着すればいいの?
このお題はちょっと難しいのですが、雪面の状況と斜度と経験値によって変わってきます。
アイゼンを付けて初めて雪山を歩くと思っていたより歩きずらく重いと感じるはずです。
ですから時間の制約があるような雪山登山の場合は、足元は軽いほうが歩行スピードも上がるのですが、雪の状態や斜面の関係上アイゼンを付けなくてはならない状況が出てきます。
そういった意味ではご自身が「滑る」「危ない」と感じたときはアイゼンを付けるのが良いと思います!
北横岳を例にすると、坪庭の高台へ上がる斜面はステップが切れているようなら、チェーンアイゼンやツボ足でも上れると思いますが、ステップが無く雪の斜面だけならアイゼンを履いておいたほうが簡単に登ることができると思います。
結論は難しいですが、手っ取り早く最初からアイゼンを付けおくほうが心配事が無くていいかもしれないというのがアドバイスになります。
アイゼンで岩場を歩く
一般雪山登山であっても雪オンリーの冬道を歩くだけではありません。木の根っこや砂利の上そして岩場も通過します。
例にあげると東天狗岳へ向かうのに中山峠を過ぎて中間の樹林エリアで割と段差の大きい岩場帯を通過することになります。
雪の積雪量等で変化はしますが、アイゼン装着のまま岩場をガリガリ音を立てながら通過します。雪へのアイゼンのグリップ感とは違い、確実にアイゼンの爪が岩場にかかっているか確認をしながらでないと登れません。
この場所はほどよい勉強場所なのでピストンなら上り下り両方アイゼン歩行での練習ができます。
アイゼンでキックステップ
アイゼンを装着していない登山靴で残雪期にもキックステップは使いますが、雪山登山のアイゼン装着時もたいてい行うことになります。
上り時での足場が崩れやすい雪質や、アイゼンの爪が容易に刺さっていかない場合等に前爪と2番目・3番目の爪をキックによって雪面に食い込ましていく歩行技術です。
このキックステップは多用する場面が多いので早い段階で習得しておきたいところです。
アイゼンでアイスバーンを歩く
スキーをされる方ならご存じかと思いますが、雪山登山では普通に完全なアイスバーンの上も歩行していきます。
当然、アイゼンの爪を確実に刺して歩行しないと「滑落」ということになってしまいます。
全神経を集中させて確実にアイゼンをグリップさせ歩幅を狭めてフラットフィッティングを基本に歩行しましょう。
アイゼンを引っ掛ける
上記でゲイター等にひっかける等という表記がありましたが、雪山登山での登山道には雪だけがあるわけではありません。
・小石
・砂利
・根っこ
・木道
・雪で隠れている何か
アイゼン装着で歩行していると、だんだん疲れてくるのと同時に案外雪面から足を上げていないことがあるのですが、その時に根っこやちょっとした障害物にアイゼンの爪を引っ掛けることがあります。
気のゆるみといってしまえばそれまでですが、無雪期以上に足元への神経は使ったほうが良いです!
アイゼンは重いです
アイゼンは重いです、加えて冬靴も重いです!
仮に今まで無雪期にライトアルパイン靴やトレラン靴で登山をされていた方には、かなりの重量が足へかかることになります。
まずこの重さで雪山登山が大変で疲れると思ってしまいます。ましてや雪山登山ではさらに「ピッケル」「ワカン」等もプラスされて日帰り登山であっても無雪期より背負い重量も増します。
この重さは慣れと、無雪期のトレーニングでしか克服できません。
雪山テント泊となると更に無雪期より重くなるのでこれこそトレーニングが必要です。
山爺は昨年から歩荷トレーニングを始めました(笑)。
アイゼンでケガをする
これもアイゼンあるあるなのですが、アイゼンをラフに扱って装着したり、横着して外して仕舞おうとした時に気づくと指から血が出てたりします(笑)。
アイゼンは御覧の通りの鋭利な爪がたくさんありますので、くれぐれも取り扱いは慎重にしてください。
アイゼンのまとめ
アイゼンは雪山登山では必須のアイテムです。まず見た目がカッコよくてごつくて危ない(爪が鋭い)ですが、自分の命を守ってくれる「勇者の鎧」と同じです。
まずは確実に登山靴に装着できるように練習はしたほうが良いです。実際のゲレンデでアイゼンの装着に四苦八苦していたり、間違った装着をしている方、装着方法が分からない方を何人も見てきました。
そういう方は「恥ずかしい」を通り越して「危険」です!!
そんな状態で雪山登山に来るっていうことを自覚したほうがいいですよ!急峻な上り・下りでのアイゼンの役割を知っている訳がないですよね!
ちょっと上から目線からモノ言いましたが、本当に何もできないのに雪山登山に安易に入ってくる人が多いです!経験者だって滑落事故が起きてしまう環境なので…。実際に目の前で滑落事故を目撃していますが、本当に危険なんだって理解して雪山登山は入門したほうが良いです。
一緒に来ているパートナーや、偶然居合わせた他の登山者にも多大な迷惑がかかるってことを自覚しましょう。もしそれで遭難事故に発展してしまったら救助要請になり大ごとです!
経験に見合った山域と技術レベルに見合った雪山選定を心がけてほしいものですね♪
ではでは。